1つ前の記事を読んだある団員から、LINEでメッセージをもらいました。
「各曲の説明に、できたら以下の事も盛り込んで頂けると嬉しいです。私には文才がないので…」
と、前置きして色々書いてありました。素直な思いのこもった良い文章でした。そんな遠慮なく自分でどんどん書き込んだら、と言うと、そもそも技術的に難しいということで、代理で投稿します。
内容は曲の説明を越えて観客の皆さんへのメッセージというべきもので、説明に繰り入れるのではなく、独立した記事として、ほぼそのまま紹介します。
----引用ここから------
フォンターナの公演日は、4月29日です。
実際のサイゴン陥落日は、4月30日です。
私たちは、今大変平和な生活をしておりますが、ミス・サイゴンは、遠くない昔、遠くない国で起きた、大変な史実を元にした作品です。
ベトナム戦争では、ベトナム人も、アメリカ人もたくさんの方が犠牲になりました。
日本からも、枯葉剤をのせた軍用機が飛び立ち、沢山の米兵が運び込まれたり、国を失ったベトナムの方が逃げてこられました。
そして今なお、病魔と戦ったり、奇形児が生まれたりと、後遺症で苦しんでおられる方が沢山いらっしゃいます。
生まれた国と時代が違うだけで、私たちも同じ思いをしていたかもしれません。
劇中、ジョンが、「戦争はまだ終わってはいない」というシーンがありますが、まさに今でも、戦争は終わっていないのです。
私はこの公演準備の間に、実際にベトナムに行きましたが、そう思います。
キムの悲劇はフィクションですが、同じようなつらい思いをした方がたくさん本当にいらっしゃいました。
ところで悪夢の場面について。ドキュメンタリーを見たのですが、実際のあの場の米兵は、ギリギリまで1人でも多くのベトナム人を助けようと必死でした。
が、とうとう最終的に大統領命令がでて、本当に仕方なく、泣く泣くヘリに乗ったということでした。
門の前のベトナム人に、「トイレに行ってくる」と嘘をついて、ヘリに乗りにいったと…
米兵全員がベトナム人の敵ではなかったし、
ベトナム人全員が米兵の敵ではなかった。
殺し合いをしたのは事実だけれども、それだけではありませんでした。
私は、枯葉剤のベトちゃん、ドクちゃんの話を親から聞いて育ち、アメリカだけが悪く、ベトナムだけが被害を受けた戦争だと、つい数年前まで単純に思っていました。
知らないとは、恐ろしいことです。事実はもう少し複雑でした。
国とか何々人のような、大きな括りではなくて、個人のレベルを見れば、敵味方や正義不正義だけではない、色々な想いがあります。
私たちがそういう一人一人の想いをもっと大事にし、そして忘れないことが、悲劇をただの悲劇で終わらせないことにつながるのだと思います。
私たちがこの演目を今公演し、精一杯役を生き、歌うことで、それらの想いを浮かび上がらせることができたら嬉しいです。
最後に、この演目を選んでくださった谷口先生に心から感謝いたします。
---引用ここまで。一部加筆修正----------