※恐縮ですが第一幕編からお読み下さい
また物語の背景は第一幕編だけであらかたわかるかと思いますので、ネタバレを気にされる方はそちらのみご覧いただく方がよいかもしれません。
18.ブイドイ
タムのような、アメリカ兵による私生児は、実は数多くいました。彼らは「ブイドイ」と呼ばれており、意味は「ゴミの人生」です。彼らこそ、儚い夢の産物でした。
ジョンは帰国後、その現状を知り、自分もアメリカ人として責任の一端があった罪を償うためにブイドイ支援の活動を行っています。
19.新しい事実
ジョンの演説の場に、クリスが来ていました。ジョンが電話で呼んだのです。ジョンはクリスに衝撃の事実を伝えます。キムが無事生きているだけではなく、クリスの子供を生んでいた。そしてベトナムから逃げ出し、今はタイの歓楽街にいるらしい、と。
一方、クリスの側も3年の間に大きく境遇が変わっていました。悪夢を見るほどキムに思いを残しつつ、自分の救いのため、別の女性と結婚していたのです。そこに改めて突きつけられたキムの存在、そしてわが子の存在。
クリスは激しく動揺しますが、とにかく妻エレンを伴って現地に赴くよう、ジョンは説得します。
20.バンコック
タイの首都バンコック。そこにある風俗店に今、エンジニアもキムもいました。ただ、エンジニアはもう経営者ではなく、呼び込みの店員にすぎません。何かというとオーナーにどやされています。そうしてなんとか食いつなぎながら、彼らはアメリカに渡る機会をうかがっていました。
と、そこにジョンが入ってきます。ジョンからクリスも来ていると聞かされ、キムは狂喜します。
21.プリーズ
キムのあまりの喜びように、ジョンはどうしてもクリスが別の女性と結婚してしまったことを言い出せません。
この上は二人を会わせるしかない。そうして、それぞれの果てしもない旅を終わらせるのが自分の役目だ。と半ばあきらめに似た気持ちでクリスを連れて来ることを約束します。
22.キムとエレン
しかしクリスが泊っているホテルのルームナンバーを聞きこんできたエンジニアが、キムに自分で訪ねてみろとけしかけます。キムはメモに書かれた場所にとんでいきますが、そこにいたのはクリスではなく見知らぬアメリカ人女性でした。あなたはきっとジョンの奥さんですねと笑顔のキムに、クリスの妻エレンは過酷な事実を伝えます。しかしキムは信じません。
タムのことに話がうつり、キムはタムをアメリカ人として国に連れ帰って欲しいと迫りますが、エレンは、タムを実の母親から引き離すことはできないし、自分もクリスとの実子が欲しいと拒絶します。
キムは深く傷つき、とにかくクリスに自分のところに、タムに会いに来て欲しいと立ち去ります。
23.今も信じてる 2
エレンにとっても、キムの存在は衝撃でした。時折、悪夢にうなされキムと名を呼びながら跳び起きていた夫は、しかしこれまで彼女のことを一度として語りはしませんでした。
エレン、キム、二人の女性がクリスに対し、変わらず信じたいという思いを新たにします。
24.今、彼女に会った
エレンは今しがた何が起きたのかを整理しようとします。
愛する夫にかつて別の妻がいたという、激しい動揺をともなうはずの場面ですが、エレンの包容力あふれる性格、そして今は自分が正式に妻であるという余裕ある立場を反映してか、落ち着いた曲調です。
キムの様子に今でも深くクリスを愛していることを見てとり、そのことに同情すら示す一方、クリスの本心が自分とキムのどちらにあるか、はっきりさせたいと決意します。
25.エレンとクリス
クリスとジョンが帰ってきました。
今となっては、クリスの心はエレンの側にありました。キムとの思い出はベトナムでの混乱の中にあり、その多くはクリスにとって悪夢でした。エレンはその悪夢から自分を救ってくれた存在であり、今さら離れることはできませんでした。
その事を二人は確認し合うと、タムについては、キムと一緒にタイに住まわせておき、十分な仕送りをして支援しようと提案します。そのようにして「良識」を示そうとするのですが、ジョンはその偽善に怒ります。
クリスとエレンの独善とジョンの怒り、そしてキムの、タムを自分の子供と認めて欲しいと願う思いが交錯します。
26.アメリカン・ドリーム
傷ついて家に戻ったキムでしたが、エンジニアに対しては「夢の中で紙の凧をあげた」と言います。
これは「紙」、すなわちアメリカへの入国許可証で空高く上がるという暗喩で、キムのせいいっぱいの強がりでした。エンジニアはこれを聞いて、ついに自分もアメリカに行けると狂喜乱舞します。喜びの幻想の中に浮かぶのはキャデラック、マリリン・モンロー、マッカーサー…。
夢の国アメリカで、ついに大きく自分の人生も開ける、と打ち震えます。
27.私の小さな神
キムにとっては、もうタムだけが全てでした。タムが貧しい暮らしから抜け出ること。
それがクリスに愛をささげた自分が、ただ虚しい存在に陥らない唯一の道だったのです。
しかし先ほどの経緯から言って、自分がいたのではタムはアメリカに連れ帰ってもらえない。そう確信します。
間もなく、クリスたちがタムに会いにやってきます。キムの決断は…?